諦めない心〜ジャンボ鶴田の最強バックドロップ人生

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    過小評価されていたジャンボ鶴田の実力
     
     最近、故ジャンボ鶴田の特集番組の録画をYouTubeで見た。鶴田さんは40歳を過ぎても少しも体力の衰えを見せぬばかりか一層強くなり、周囲から怪物と恐れられたプロレスラーであった。私はアントニオ猪木をルーツとする新日本プロレスのストロングスタイルを支持していたので、鶴田さんの試合の運び方はあまり好みに合わなかったが、その強さは認めざるを得なかった。
     
     当時は格闘技志向の強いUWFというプロレス団体がブームを呼んでおり、その総帥の座にあった前田日明選手がカリスマ的人気を誇っていた。一部のファンは「前田は猪木より強い。鶴田などは相手にならない」と真面目に考えていた。一方、私は前田さんの実力は過大評価されすぎていると思っていた。もちろん、アントニオ猪木には絶対に勝てなかったと思うし、鶴田さんと対戦しても、世間の予想に反して鶴田さんの圧勝に終わると確信していた。
     
     鶴田さんは現役を引退した時にマスコミのインタビューに対し、「我がレスラー人生に悔いはなし」と語ったが、「戦ってみたかった相手は?」という問いには、一瞬、悔恨に満ちた表情を見せ、「前田とやってみたかった」と答えていた。こういことを言うからには勝算も十分にあったのであろう。
     
    恵まれた身体
     
     鶴田さんには日本人にしては恵まれすぎた体格と身体能力があった。UWFファンは関節技(サブミッションホールド)さえ決まればどんな巨漢レスラーでも逃げられないと本気で信じ込んでいたが、鶴田さんのような体のサイズが異常にでかく、しかも驚異的な運動神経を持つ人にそう簡単に関節技など決まるわけがない。それは後にUWF勢が坂口征二選手と戦った時に証明された。坂口さんは年齢的にピークをとうに過ぎていたが、体のサイズ(身長+体重)がスバ抜けて大きく、技は少なくても、一つひとつのパンチやチョップが非常に重く、二流や一流半のレスラーでは勝負にならないほどの強さを十分に維持していた。坂口さんは関節技が得意ではなかったが、UWF勢が関節技をかけようとしても、それを強引にふりほどいてしまう怪力があった。
     
      前田さんが過大評価された理由は彼の技術面だけにあるとは思えない。世界最強のレスラー、アントニオ猪木を少しも恐れない強気で大胆な言動が彼の最強神話を作り上げたといえよう。一方、常識人であり、温厚な性格で知られる鶴田さんの試合は格闘技というよりも爽やかなスポーツのイメージが強く、それが災いして、本来の実力が過小評価されてしまったように思う。

    パフォーマンス
     
     鶴田さんは試合中に相手を倒した後、観客に向って「オー!」と叫び、拳を突き上げる癖があった。これがファンに揶揄されて、晩年は会場のお客さんも一緒に「オー!」と叫ぶようになった。挙句の果ては、鶴田さんの入場テーマソングが会場に流れると、手拍子の代わりに曲の要所要所でお客さんがタイミング良く「オー!」と叫ぶようになってしまった。はじめは鶴田さんをからかうつもりで誰かが始めたのであろうが、明るい人柄の鶴田さんはそれを逆手にとった。馬鹿にされるから「オー!」をやめるというネガティブな選択をせず、逆にそれまで以上に「オー!」を連発してファンを沸かせた。試合後もアントニオ猪木の「ダーッ!」に対抗して、「オー!」と雄たけびを上げるようになった。
     
    人生の転機
     
      面白いことに、最初はからかい半分で「オー!」と叫んでいたお客さんも「オー!」と叫んでいるうちに鶴田さんの大ファンになってしまった。実力は過小評価されて不運な鶴田さんであったが、レスラーとしての晩年は大変な人気ぶりであった。私は鶴田さんの明るく優しい人柄が好きだった。特に引退式の時、リング上でのスピーチを終えて、ファンの期待に応えるべく「オー!」と叫ぶ前、気合を入れてシャツの袖をまくる時の照れくさそうな笑顔は未だに脳裏に焼きついている。笑顔で人を魅了できる最高の人物であった。
     
      鶴田さんはレスラーとして絶頂期を迎えた40代に突然、肝臓病を患い、第一線を退くことを余儀なくされた。ようやく本来の実力が周囲に認められ、最強説まで囁かれるようになった矢先の出来事であった。
     
     鶴田さんは人生の進路変更を目指して筑波大学の大学院に通った。そして第二の人生のターゲットを大学教授に絞り込んだ。年間試合数は30に激減し、その大半は前座の試合であった。(闘病中といえども前座にしては強すぎた)
     
      教授になるためには、その前段階として、非常勤講師、助教、准教授という関門が続くが、亡くなる直前の鶴田さんは非常勤講師として教鞭をとるレベルに達していた。恐らく生きつづけていれば、今頃は教授として活躍されていたに違いない。私は逆境にあっても挫けない心を持つ鶴田さんを心から応援していた。鶴田さんは格闘家としては申し分のない肉体を誇っていたが、過酷な戦いに向いていないと思っていたからである。あまりにも性格が優しすぎる。
     
     鶴田さんの必殺技はバックドロップであるが、相手が弱いレスラーの場合、受身をとり損なって病院送りにしてしまってはいけないという配慮から敢えて角度を変えて、ダメージが少ないように計算して投げていた。鶴田さんのこういう姿勢には辛らつな批判が集中したが、鶴田さんは「自分は世間になんと言われようと、このスタンスを変えることはない。仕事仲間に致命的なダメージを与えることは自分の主義に反する」と反論していた。
     
     その頃はプロレス人気が下火になりかかっていた。総合格闘技が脚光を浴び出し、八百長のイメージがつきまとうプロレスは一段低く見られる世の中になっていた。プロレスラーが総合格闘技の試合に出て負けるケースも度々あり、プロレスファンは苦々しい思いを抱いていた。鶴田最強説を信じるファンは「もし鶴田が元気ならば・・・」と悔しさを滲ませた。たしかに、鶴田さんが健康を取り戻し、本腰を入れて総合格闘技の世界に転進すれば、プロレスファンの溜飲を下げる結果を残せたと思う。
     
     しかし、総合格闘技の試合がプロレスよりもシビアなのは事実である。鶴田さんの優しい性格が災いして不覚の負けを喫する危険もあったように思う。やはり、アントニオ猪木のようにリング上では鬼と化し、勝つために手段を選ばないレスラーでなければ、総合格闘技は難しいかもしれない。プロレスラーが弱いという意味ではない。ジャンルが違う格闘技だからである。当然ながら、総合格闘技の選手がプロレスルールでレスラーと戦えば、圧倒的に不利になる。
     
    印象に残る言葉
     
     話を元に戻す。鶴田さんは第二の人生に向けて順調な歩みを見せていたが、突如として医師から厳しい宣告を受ける。それは「あと一年か一年半はもつだろうが、それ以降は命の保証はできない」という内容であった。
     
      「肝臓移植手術を受けなければ死ぬ」。これが医師の宣告であった。本人もここまで肝臓機能が衰えているという自覚はなかったらしく、鶴田さんの一家にとって医師の言葉はセンセーショナルなものであった。しかし、鶴田さんは持ち前のチャレンジ精神でこのピンチを乗り越える決意を固め、海外で肝臓ドナーを探す懸命の努力を始めた。その特集番組でナレーターが語った言葉が耳から離れない。
     
     「命の期限」・・・鶴田さんはついにカウントダウンが始まった人生の末期に起死回生の大逆転を期して韓国、オーストラリア、フィリピンなどで肝臓ドナーを探し回った。もしドナーが見つかれば、自分の命はつながる。見つからなければ自分はこの地上から消える。言語を絶する凄絶な状況に直面していたのである。
     
     鶴田さんはついにフィリピンでドナーを見つけ、移植手術までこぎつけたが、手術中のアクシデントで不運にも命を落としてしまった。死因は出血多量であった。折角ここまで来たというのに・・・。ご家族にとってもファンにとっても悔やんでも悔やみきれない死である。しかし、鶴田さんは何事も最後の最後まで諦めてはならないという尊い教えを我々に残してくれた。鶴田さん、ありがとう。
     
     手術の前日、鶴田さんは夫人に国際電話をかけて今までの献身に対して感謝の言葉を述べたという。手術によって助かることを信じていた奥様は、まるで死ぬ間際の人が言うような言葉が夫の口から漏れたので、「何言ってるのよ」と怪訝そうに言ったそうだが、恐らく鶴田さんは万一の手術失敗をも想定して、敢えて遺言を残したのであろう。どこまでも温かい人であった。
     
    最強のバックドロップ
     
     本気を出した時の鶴田さんのバックドロップの破壊力は凄まじかった。バックドロップはヘソで投げる。鍛え抜かれた強靭な足腰がなければ自分の体にもダメージを負ってしまうし、投げに失敗すれば、相手の下敷きにもなりかねない。簡単そうに見えてリスクの高い技である。
     
     完璧なバックドロップはジャーマンスープレックス(原爆固め)に勝る。自らの頭をマットの上に安全に着地させなければならないジャーマンスープレックスとは異なり、バックドロップは自分の肩がマットに着地すればよい。それゆえ、思い切り相手の後頭部をマット上に叩きつけることができる。しかし、完璧を求めれば、それなりのスピードと急な反りが要求されるため、相手が重量級の場合、腰に負担がかかりやすい。
     
     そのリスクを負いながらも積極果敢に最強のバックドロップを仕掛ける鶴田さんの姿勢は彼の人生そのものであった。常にポジティブなスタンスで自分の力を信じ、49年の生涯を生き抜いた鶴田さんは何事にも体当たりで勝負していた。
     
     どうしても我々はあの恵まれた体に目が行きがちである。鶴田さんはなんの努力もせずに元から強かったと思ってしまうが、とんでもない。栄光の陰には常に数々の試練と向き合う彼の姿があった。試合内容が生温いと酷評された20代の頃、鶴田さんは世界のトップレスラーと戦いながらそれぞれの良さを全て吸収するように人知れぬ努力を重ねていた。それがルーテーズ直伝のバックドロップを習得した30代前半に実り、一部のファンからは過小評価されながらも熱狂的ファンには「鶴田こそが最強」と言われるに至ったのである。
     
     鶴田さんは若い頃、自分のテーマソング(ローリングドリーマー)を自ら作詞・作曲してレコードに吹き込んだことがある。歌はお世辞にもうまいとは言えず、捻りの足りない歌詞もセンスに欠ける嫌いがあるが、メロディーは素人が作った曲にしてはかなり美しいと思う。将棋の郷田真隆九段(元タイトルホルダー)は「将棋の公開対局で入場時に音楽が流れるとすれば、自分はジャンボ鶴田の『ローリングドリーマー』で入場したい。とても格好良い曲だ」と語っていた。やはり、あのメロディーには不思議な魅力がある。鶴田さんは本業であれ、趣味(音楽)であれ、全てに全力を尽くす人であった。
     
    人生のバックドロップ
     
     40歳を過ぎてから大学院に進学して教授を目指すというのも常人の発想ではない。まさに一発逆転の「大技」であった。鶴田さんはレスラーとして第一線を退き、試合数が激減した後もジャイアント馬場(当時の全日本プロレス社長)の温情により、メーンイベンター時代と変わらぬ高給待遇を受けていた。口だけが達者でなんの特技もない人は「俺だって、生活の安定さえ保証されていれば、40代で大学院に進学できる」とうそぶくかもしれない。しかし、大学院に入るための難しさは世間の人の想像を超えている。若いうちは学力が人並み以上にあれば、がむしゃらに勉強すれば大学院には入れる。しかし、記憶力が衰えた中年が受験のために英語や第二外国語の勉強をするのは想像以上に酷なことである。中央大学法学部にスポーツ推薦で入学した鶴田さんにとっては、これが人生ではじめての本格的な受験勉強であったかもしれない。私立大学ならば有名人ということがメリットになり、たとえ合格点に
    満たなくても宣伝効果を考えて入学を許す可能性は十分にあるが、鶴田さんが選んだのは国立の筑波大学である。鶴田さんは闘病、前座でのスポット参戦(前座とはいえリングに上がるために最低限のトレーニングは欠かせない)と受験勉強を両立させ、見事に合格を勝ち得たのである。頭の悪い人には到底不可能な離れ業である。
    我々も鶴田さんのように常に自分を力を信じ、人生の正念場で渾身のバックドロップを放ちたいものである。
      リヴィエラ倶楽部 佐々木智親(海殺しX開発者)

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